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第六話・すれ違い・・・・
「かごめー、早く起きなさーい。学校に遅れるわよー」
午前8:00 かごめの母がかごめを呼ぶ声が響く。かごめはもぞもぞと布団の中で動いた。なかなかかごめがこないため、首をかしげ、かごめの母は部屋に行った。
「ほらっどうしたの?かごめ」
「・・・・学校行きたくない・・・・」
「あら、熱でもあるの?」
弱弱しく答えるかごめに額に手を乗せ、熱があるか確かめた。
「・・・熱はないけど、調子悪そうね。昨日から元気なかったし・・・」
心配そうに見るかごめの母の後ろから祖父が顔を出した。
「今日ぐらい休ませたらどうだ?」
「そうね。かごめ、学校に電話しておくから今日はゆっくり休みなさい」
「・・・うん」
かごめの母は部屋から出た。かごめはゆっくりと起き上がって、外を見た。
(「学校になんか行けない・・・・・。行ったら辛いだけ・・・」)
-学校-
「かごめは今日は休みだ。調子が悪いらしい」
桔梗先生がそう言うと生徒たちはざわめいた。
「どうしたんだろ、かごめ。いつも元気なのに・・・・」
「・・・やっぱり昨日のこと・・・」
由加、絵理、あゆみが顔をあわせて言った。珊瑚も心配そうにしている。しかし、弥勒の顔を見ようとしない。犬夜叉は犬夜叉で無言だ。

「犬夜叉」
犬夜叉は廊下を歩いていたら後ろから桔梗先生に呼び止められた。
「・・・なんだよ。桔梗」
「かごめ・・・やはり昨日のこと気にしているんじゃないか?」
桔梗先生がそういうが犬夜叉は無言だ。
「・・・心配ではないのか?」
「別に。それより桔梗。昨日の答え言ってもらおうか・・・」
「・・・・」
犬夜叉が真剣な顔で桔梗先生を見るが、桔梗先生は下を向いた。しばらく沈黙が続いたがそこに・・・・。
「桔梗ー!!」
後ろからやかましい声がした。二人の顔は一瞬にして強張った。なぜならば・・・。
「桔梗ー!!今日こそはお前を我が物に・・・・」
バキィ!!
奈落先生であった。その奈落先生が桔梗先生に触れようとしたが、犬夜叉がすかさず桔梗先生をかばい、奈落先生を殴った。
「お・・・おのれ犬夜叉・・・。どこまでわしの邪魔をする・・・」
「犬夜叉ぁーーーーーー!!!」
苦しそうに言う奈落先生を無視して、しかも叫びながら奈落先生を踏んだのは鋼牙であった。
「おい!かごめはどうした!!いつも元気よく廊下にいる教室にいる屋上にいる校庭にいるかごめがどこにもいねーじゃねーか!!!」
「・・・今日は休みだ」
そういったのは桔梗先生だった。それを聞いた鋼牙はがくぜんとした。
「・・・かごめが・・・休み・・・?」
「・・・・」
無言でそっぽを向く犬夜叉をきっと鋼牙は睨んだ。
「おいてめぇ!!かごめに何しやがった!!」
「ああ?何もしてねーよ!!」
「うそつくんじゃねぇ!!かごめが休んだのにはわけがあるはずだ!風邪で休むわけねぇ!そうとしたら原因はてめぇしかいねぇ!!」
「風邪で休むわけがないと断定できるのはなぜだ・・・」
ぎゃぁぎゃぁ言う鋼牙に対してぼそっと桔梗先生が言った。
「こうしちゃいられねぇ!かごめ待ってろ!!」
そういい残して鋼牙は走り去っていった。またしばらく沈黙が続いた。
「・・・お前は行かなくて良いのか?」
「行ったとしても俺なんかに何ができるんだよ」
桔梗先生は犬夜叉のその言葉にかっとして犬夜叉をグーで殴った。しばらく犬夜叉はぼーぜんとしたが桔梗先生を見た。
「な!何しやがんでぃ!!」
「ばか者!かごめはおそらくお前を待っている!!なのにお前と言う奴は・・・」
「仕方がねぇだろ!!確かに俺はかごめが好きだが、桔梗!お前のことも好きなんだよ!!」
突然犬夜叉が大声でそう言い、さすがの桔梗先生も口ごもってしまった。犬夜叉は舌打ちして去ってしまった。
その背中を睨みながら
「この!二股男が!!」
と叫んだ。完全に頭にきた桔梗先生はまだ倒れている奈落先生を踏みながら去っていった。
「・・・もしかしてわしって思いっきり忘れられとる?」

「銀太!八角!!」
「え?鋼牙ぁ!?」
突然全速力で走ってくる鋼牙を見て、二人は思わずぎょっとしてしまった。
「どうしたんだよ、そんなにあわてて」
「今からかごめの家に行くぞ!!」
「え?かごめ姐さんのところに?」
八角がすっとぼけた声を上げると鋼牙はまた全速力で走っていった。そのあとをあわてて二人が追う。
「ん?あ!!鋼牙ー!!」
校庭では高等部の1-Bが体育をやっていた。そこに菖蒲が鋼牙に気づき、半分怒り混じりに鋼牙に向かって叫んだ。
「何やってるのよ!!体育サボってー!!」
「かごめが休みなのに体育なんてやってられっかー!!」
「え?かごめが・・・・」
しばらくぼーぜんとしたが菖蒲はきっと前をむき、蛮骨先生のほうへ行った。
「先生!!鋼牙がかごめの家に行くそうなので私も行きます!!」
「え?あ、おい!!」
蛮骨先生の了解もなしに菖蒲は全速力で鋼牙を追った。
「・・・まだいいなんて言ってねーのに・・・・・」

「はぁ・・・・」
その頃かごめは部屋で外を見ながらため息をついた。
(「あたし・・・これからどうしよう・・・。犬夜叉にもう顔を合わせられない・・・」)
なんでこんなに悩まなきゃいけないの?
どうして・・・・
どうして好きになったの・・・
私は・・・・私は!!!
「かごめーーーーーーーー!!!」
そのときかごめを呼ぶ声が聞こえ、かごめははっと顔を上げた。そこには全速力でかけてくる鋼牙にその後ろでへろへろになっている銀太と八角。そしてそのあとを追う菖蒲の姿があった。
「こ、鋼牙くん!銀太くんに八角くん・・・。それに菖蒲ちゃんまで・・・」
「お!かごめー!!大丈夫かー!!」
「あらあらかごめのお友達?」
神社の中でやかましく叫んでいる鋼牙を見て、かごめのママがにっこりと微笑みかけながら聞いた。
「ええ、まぁ。かごめ姐さんの具合はどうっすか?」
息を切らせながら八角が聞く。
「う~ん、熱はないみたいなんだけどね~・・・」
「あ!鋼牙!!」
おっとりと言うママを無視してずかずかと家の中に入った鋼牙。そのあとをあわてて追う二人。
「おい!勝手に入るのはまずいだろーが!!」
「勝手にお邪魔いまーす」
「いえいえ。かごめは二階に上がってすぐ目の前の部屋よー」
ママの言葉に二人は礼をして、上がっていった。そのあとを無言で走って入った菖蒲。
「にぎやかね~」

「あ、いらっしゃい・・・」
元気なさそうに言うかごめを見て鋼牙は足を止めた。その背中に顔をぶつけた八角。
「いきなり止まるなよ~鋼牙」
文句を言ったのは銀太だった。その後ろから勢いあまったのか菖蒲が突進してきた。
「うわ!!」
「「どわぁ!!」」
「きゃっ」
たちまち菖蒲は銀太にぶつかりドミノ倒しのように一斉に倒れた。
「いったぁ~。ちょっと!こんなところで突っ立てないでよー!」
「あ、あのなぁー!!文句言うなら降りてから言え!!」
菖蒲は三人の上にちょこんとのかっていた。菖蒲は笑い飛ばしながらゆっくりと下りた。
「かごめ・・・」
「何?鋼牙くん」
心配そうに手を握りながら言う鋼牙に対してかごめはきょとんとした。後ろでは菖蒲が何かいいたそうにしていたが、八角と銀太が止めている。
「犬っころと何かあったのか?」
「!!」
ストレートに言われ、かごめはぎくっとしてしまった。かごめはうつむき、黙り込んでしまった。そんな様子を見て、鋼牙は困ってしまった。
「か・・・かご・・め?」
「・・あったって訳じゃないけど・・・」
そんなかごめを見て、菖蒲はよしっとつぶやいて、八角と銀太を部屋から追い出した。
「お、おい!菖蒲?」
銀太のことばを無視し、今度は無言で鋼牙の手を引っ張った。
「お、おい!菖蒲!!何だよ」
「あんたたちはそこで待ってな!!」
バタンッと菖蒲はドアを閉めた。
「何なんだ?あいつ」

「で?何があったの?」
「うん・・・」
菖蒲はかごめの悩みを聞く気満々であった。かごめはうつむいたままうなづいた。
「何かあったってわけじゃないけど・・・・・。ねっ菖蒲ちゃんは鋼牙くんのこと好きなのよね」
「え?うん・・・まぁ」
突然聞かれて菖蒲は口ごもってしまった。そう言う菖蒲を見て微笑むかごめ。
「かごめも犬夜叉好きなんだろ?」
「・・・・うん。けど・・・」
菖蒲に聞かれ、弱弱しく答えるかごめを見て首をかしげる菖蒲。
「・・・もしかして犬夜叉には好きな人いるとか?」
「・・・・うん・・・。もう何年も前から」
「・・・・そっ・・かぁ」
その答えを聞いて菖蒲は下を向いてしまった。そんな菖蒲を見たかごめはあわてて
「菖蒲ちゃんまでそんな顔しないで。もういいのよ」
「けど!かごめは犬夜叉が好きなんだろ!?」
「・・・・・」
かごめはうつむいた。その頃鋼牙たちはドアの傍で菖蒲たちの話を聞いていた。
「犬夜叉のやろう~~~。かごめをこんなに悩ませやがって~~~」
「犬夜叉の好きな人って誰だろ」
「きっとあの人だよ。桔梗先生。前から噂になってただろ?」
「あ、そっか」
八角の言葉に納得する銀太。鋼牙はむかむかしていた。
その時。
ピンポーン
「はーい」
チャイムが鳴り、ママがドアを開けるとそこには・・・・。
「かごめー。お友達よ~」
ママに言われ、ドアを開けるとそこには階段を上る珊瑚と琥珀、りんの姿があった。
「あ、みんないらっしゃい」
「かごめちゃん。大丈夫?」
「うん。・・・・珊瑚ちゃん、弥勒様は?」
ふと気づき、思わず口にしてしまった。珊瑚は一瞬止ったが
「いつも一緒ってわけじゃないんだから~」
そう言う珊瑚は笑っていたがすごくつらそうだった。
(「珊瑚ちゃん。まだ弥勒様と仲直りしてないんだ・・・」)
「それよりも今日は妙に早いね」
「ああ、今日は短縮だったんだよ。先生たちの都合で」
「鋼牙と八角たちとあたしは完璧サボったけどね」
そう言われ、鋼牙と八角と銀太はぎくっとした。
「そっか・・・・」
気のないかごめの様子をみて、珊瑚たちも首をかしげた。
「かごめちゃん、本当にどうかした?」
「元気ないですよ?」
「何か悩んでいたらりんたちになんでも言って」
珊瑚と琥珀とりんが口をそろえてかごめに言った。かごめはみんなを見回して、ゆっくり微笑んだ。
「ありがと。みんな・・・」

「どうかしましたか?桔梗先生」
その頃桔梗先生は机に座って上の空でいた。そこに睡骨先生がきて聞いた。その瞬間桔梗先生ははっとして睡骨先生を見た。
「いや・・・なんでもない」
「さっきからぼーっとしてるけどなんかあったのか?」
今度は神楽先生が聞いた。そのとき横からぬっと奈落先生が入ってきた。
「桔梗!!なんならわしが慰めてやろう!!」
「・・・遠慮する」
そう言う桔梗先生におもいっきりショックをうけさらにやかましくなった。そんな奈落先生を神楽先生は蹴飛ばして気絶させた。
「そういえば今日かごめさん休みでしたね・・・」
「あ?そうだったのか?」
「ええ、いつも犬夜叉くんのそばにいるのに今日はいませんでしたからねぇ・・・」
心配する睡骨先生。桔梗先生は下を向いてただ黙っていた。
【仕方がねぇだろ!!確かに俺はかごめが好きだが、桔梗!お前のことも好きなんだよ!!】
(「犬夜叉の奴・・・・。前からずっとそうだ・・・。かごめが好きなくせに私を好きと言う・・・」)
桔梗先生はだんだんむかむかしてきた。
「?どうしたー桔梗。変な顔して」
半分からかっている神楽先生の声も届いてないらしい・・・・。その時、職員室のドアがガラリと開いた。
「・・・・桔梗先生」
そっと言う睡骨先生を見てから指差すほうへと目を向けた。桔梗先生は目を見開いた。
そこには・・・・

「じゃぁかごめさん。何かあったら絶対にりんたちに言ってね!」
「うん。ありがと、りんちゃん」
そう言い、微笑むかごめ。そこに鋼牙がかごめの手を握りながら、
「かごめ。お前は俺ものだ!悲しいいことがあったらいつでも俺のところにきな」
「馬鹿言ってるんじゃないよ!!」
菖蒲は鋼牙の頭を思いっきり殴り、鋼牙を引っ張っていった。
「じゃぁかごめ姐さん。また、学校で」
「失礼しましたー」
そういい残して四人は帰っていった。
「姉上。俺たちも帰ろう」
「ああ、琥珀たちはさき帰ってて」
琥珀はその言葉にしばらく首をかしげていたがふとなにかに気づいたような顔をして、にっこり微笑み、
「わかった!なるべく早く帰ってきてね。父上が心配するだろうし」
「わかったよ。琥珀もりんちゃんを家まで送ってやりなよ」
「はーい。じゃぁかごめさん。お大事に」
そう言い、琥珀とりんは帰って行った。珊瑚はかごめのほうを向き、聞いた。
「かごめちゃん、本当は何かあったんだろ?」
「え?」
突然そう言われ、またうつむくかごめ。
「・・・うん。まぁ・・・・。珊瑚ちゃんは弥勒様とまだ・・・仲直りできてないんでしょ?」
「え?・・・・・うん。あ、昨日はごめんね。あんなこと言って」
「ううん。いいよ、誤らなくて」
しばらく重い空気が流れた。先に口を開けたのはかごめだった。
「・・・実はね。昨日犬夜叉と桔梗先生が一緒にいるところみちゃったの・・・」
「え・・・。犬夜叉と桔梗先生が!?まさか犬夜叉まだ桔梗先生のこと・・・」
「うん・・・好きだと思う・・・」
珊瑚は信じられないって言う顔をした。
「・・・そっか。でも気にすることないよ!そんなことで落ち込むなんてかごめちゃんらしくもない」
「・・・落ち込むよ~」
上目遣いで珊瑚を見るかごめ。ふとして二人同時に笑い出した。
「そうだね。くよくよしてもしょうがないよね!」
「そうそうそれでこそかごめちゃん♪」
また二人はくすくす笑い出した。その時・・・・・
コツ・・・・
足音が聞こえ、かごめと珊瑚はその方を見た。かごめは目を大きく開けた。なぜならそこには。
「・・・犬・・・夜叉・・・」
そう、そこには犬夜叉が立っていたのだ。それをぼーぜんと見るかごめ。珊瑚はそっと、その場を離れた。
(「がんばれ。かごめちゃん」)
珊瑚は心にそう思いながら日暮神社をあとにした。
(「かごめちゃん・・・いいな。喧嘩とかしても相手が来てくれるんだもん・・・・。あたしの方なんか・・・」)
そんなことをぶつぶつ胸中でつぶやく珊瑚の目にある人物の足が映った。珊瑚ははっと顔を上げた。
「み・・・弥勒」
そう、さっきのかごめ同様、そこには弥勒が立っていた。珊瑚はしばらくぼ-ぜんとしていたが、下を向いて弥勒のことを無視してその場を立ち去ろうとした。しかし。
ぱし!
「!!」
弥勒が珊瑚の手をつかんだ。珊瑚はそのほうへと顔を向けた。
「逃げないでください」
「なんだよ・・・・。誤ったって許さないから」
珊瑚は今にも泣きそうだがひたすらこらえた。弥勒はしばらく黙っていたが手を離さなかった。
「・・・離してよ」
「いやです・・・と言ったら?」
珊瑚はその瞬間ばっと弥勒の手を思いっきり振りほどいた。そしてきっと弥勒を見た。
「あたしを甘く見るな!!」
「・・・・」
弥勒はただ黙っている。黙って珊瑚の瞳をじっと見ている。珊瑚はそれが耐え切れなくなり、走り出した。
(「何で?何でここにいるんだ!!もうあたしの前から・・・」)
そう思いながら走っていると急にまた弥勒に手をつかまれた。珊瑚は今度は泣き声でその手を振りほどこうとした。しかしいつもの弥勒の力とは思えないほど弥勒は珊瑚の手を強くつかんでいる。
「離せ!!!もうあたしの前に現れるな!あたしに近づくな!!弥勒なんて弥勒なんて!!!」
珊瑚が泣きながら叫ぶと急に頬に暖かいものが触れた。
「・・・嫌い。ですか?」
「!!」
自分が言おうとしたことを弥勒が言い、珊瑚はなんだか罪悪感を感じた。好きではないのになぜこんなにムキになっている自分が恥ずかしくなってきた。
「ああ!そうだよ!!」
これ以上何も言いたくないのに。こんなこと言いたくないのに。そんな気持ちがあふれているのに珊瑚の口からは珊瑚が望んでない言葉が出てくる。弥勒はそれでも無表情であった。
(「何か言ってよ!いつものように笑って・・・。何で何も言わないのさ・・・。何で・・・」)
珊瑚の目からはどんどん涙が落ちる。手をぎゅっと握り、唇をかみ締めながらも涙はこぼれ落ちてくる。ふと、頬に暖かいものを感じた。
「・・・・・?」
ふと目を開け、前を見ると、弥勒がすぐ目の前まで来ていた。そして珊瑚の涙をぬぐっている。珊瑚は目を見開いた。そして・・・
ぎゅ・・・・
弥勒は珊瑚を抱きしめた。珊瑚は何度も瞬きをした。弥勒はただ黙って珊瑚をきつく抱きしめている。
「み・・・弥勒?」
「すみませんでした」
「!!」
突然謝れ、珊瑚は息を詰まらせた。
「私はいつも珊瑚のこと怒らせて・・・・私のせいで・・・・」
「迷惑の次は怒らせてかよ」
珊瑚はぶすっとしながら答えた。弥勒はふっと笑った。穏やかな顔で、そっと珊瑚を見た。
「けれど・・・珊瑚は私にとって特別な存在だ」
「え・・・」
突然そういわれ、珊瑚の頬は赤く染まってしまった。しかし、弥勒はそんなことも気にせず真剣な顔で珊瑚を見ている。
「それだけは覚えておいて欲しい・・・」
「・・・・・・」
珊瑚は黙っている。弥勒のことをじっと見ながらもなお黙っている。そしてまた、目から涙がこぼれ落ちる。
「珊瑚・・・・」
弥勒はまた、今度は優しく、珊瑚を抱きしめた。それと同時に珊瑚も弥勒のことを抱きしめ返す。
そこはもう二人の世界となっていた。

ザア・・・
日暮神社。そこではかごめと犬夜叉が御神木の前で立っていた。
「何しに来たの」
先に口を開けたのはかごめだった。犬夜叉はじっとかごめを見ていた。
「用がないなら帰って」
冷たく言い放つかごめ。しかしそれにひるむことなくただ突っ立っている犬夜叉。それにかっときたかごめはきっと犬夜叉を睨み付けた。
「あたしのところに来ないで桔梗先生のところに言ったら!?桔梗先生のことが好きなんでしょ!だったらここにいてもいいの?」
「・・・俺はかごめも好きだ」
突然そういわれ、かごめは一瞬口つぐんだ。しかしなお、犬夜叉を睨み続ける。
「何・・・それ。まだそんなこと言ってるの?もぅいい加減本当のこと言ったらどうよ!どうせあたしのことなんかこれっぽっちも想ってないでしょ!!」
かごめは強く言い放つ。しかし相変わらず犬夜叉はひるむことなくかごめをじっと見、一歩前へ出た。
「こないでよ!もう帰って!!」
「・・・・」
犬夜叉は無言でかごめに近づく。かごめは犬夜叉のことを睨んでいるが時期に、かごめの目には涙が浮かんできた。
(「やだ・・・どうして涙が出てくるの・・・・」)
かごめは思わず下を向いた。犬夜叉は黙っている。ずっと・・・。かごめはどうすればいいのかわからず、下を向いて目を泳がせている。その時。
ぐいっ
「!?」
突然腕を引っ張られ、驚くかごめ。目を開けるとかごめの顔には暖かいものが当たっていた。そう、それは犬夜叉の胸だった。
「犬・・・夜叉?」
犬夜叉はぎゅうっとかごめを抱きしめる。かごめの瞳からはどんどん涙がこぼれ落ちてくる。
「離して犬夜叉!」
「やだ・・・。離せといわれて離す俺じゃねぇよ・・・」
(「何言ってるのこいつ・・・・。やだ・・・・。早くこの場から逃げ出したい!!」)
かごめは抵抗するが犬夜叉は力いっぱいかごめを抱きしめている。一向にかごめのを離そうとしない。しばらくかごめは黙っていたが次第に耐え切れなくなり、
「・・・・離して」
「やだっつってんだろ・・・・」
「離してっていってるでしょ?今日のあんた変よ?」
かごめがそう言い放つとふっと犬夜叉は手をかごめの肩をつかみ、かごめを見た。かごめの頬は赤く染まった。
「信じてくれるか・・・?俺がかごめが好きだって言うことを・・・・・」
「信じるわけないでしょ!!だってあんたは桔梗先生のことが好きなんでしょ!!だったらあたしにもそんなこと言わないでよ!この二股男!」
かごめがずけずけと言い放つが犬夜叉は黙っている。いつもなら怒って言い返すくせに何も言わない・・・・。かごめは何を言ったらいいのかわからなく、ただ、こぼれ落ちてくる涙を静かに拭いた。
「さっき桔梗に会った。桔梗の気持ちを聞いた。かごめのたちには言ったことないけど実は中学の時桔梗と付き合ってたんだ・・・」
かごめは胸が苦しくなった。すごく・・・すごく・・・。しかし犬夜叉は坦々と話を進める。
「だけど一年後に別れた。だけど俺はまだ桔梗のことが好きだし、かごめののことも好きだ・・・。どっちを選べばいいか・・・わからない・・・」
「・・・なにそれ・・・。そんなこと私に言われても困るわよ!」
「・・・そうだな。こんなことかごめのに言っても仕方がない。だけど・・・今はかごめのことをすごく大切に思っている。かごめのと一緒にいると心が安らぐ・・・。俺にはかごめが必要なんだ!」
「・・・・・」
「こんな俺ですまねえ・・・。だけどこれが俺の本音だ・・・」
かごめは黙っている。黙って下を向いている。犬夜叉は不安げな顔でかごめを見ていたが、ふと、かごめが笑い出した。
「かごめ?」
「・・・なんか馬鹿みたい。一人で怒って・・・。やきもち焼いて・・・勝手なこと思い込んで・・・。犬夜叉の気持ちなんてこれっぽっちも思ってなかった・・・」
「かごめ・・・・」
かごめは微笑んで犬夜叉を見るが、目からは涙がこぼれている。犬夜叉は黙って零れ落ちている涙をぐいぐいと拭く。
「わかったならいい加減泣きやめよ」
「・・・止まらないんだもん・・・。なんでだろうね、ほっとしたらどんどん涙が出てくる・・・」
フワ・・・・
「・・・!」
犬夜叉は今度は優しくかごめを抱きしめた。かごめは目を見開いた。
「・・・ほらっ泣きやんだか?」
「うん・・・・。不思議だね」
かごめは犬夜叉のことを抱きしめ返した。そして静かに・・・
「ごめんね・・・犬夜叉・・・。ごめんね」
-次の日-
「おはよー。珊瑚ちゃん、弥勒様」
「おはよ☆かごめちゃん」
「おはようございます、かごめ様、犬夜叉。どうやら仲直りできたようですね」
弥勒の言葉で虚をつかれた顔をする犬夜叉とかごめ。かごめはうろたえながら、
「そ、そういう弥勒様も珊瑚ちゃんと仲直りできたのね」
「な!何言うのさかごめちゃん!」
「そうですよ、かごめ様。私と珊瑚はいつも仲良しですよ」
「何なでながら言ってんだよ!!」
ゴン!!
弥勒はいつものように珊瑚にげんこつをくらわせられた。弥勒は頬をかきながら苦笑いをする。その時、後ろからものすごい勢いで駆けつけてくる人物がいた。
「かごめーーーー!!」
「こ、鋼牙くん・・・・」
鋼牙はかごめの手を握ろうとしたが、犬夜叉にそれを阻止された。
「おう犬夜叉。昨日はよくもかごめを泣かせたな」
「ああ?何のことだ。泣かせたのはてめぇのほうじゃねぇのか」
いつものように喧嘩が始まり、かごめはため息をついた。そこへ、菖蒲が近づいてきた。
「どうやら解決したみたいだね」
「菖蒲ちゃん。昨日はありがと☆」
「あたしは別に何もしてないよ」
そう言い、菖蒲はかごめから離れ、鋼牙の元に近づいた。かごめはそんな菖蒲を微笑みながら見た。
「ちょっと鋼牙!!あたしと言うものがありながらまだそんなこと言ってるの?」
「って菖蒲!何度も言ってるだろうが!あれは親が勝手に決めたことであって、俺はおめぇのことこれっぽっちも想ってねーんだよ!!」
「それでも一族が決めたことにはさからえない!たとえ鋼牙が他の誰が好きであろうとあたしはあきらめない!!」
完璧に犬夜叉たちのことを忘れ、言い合いをする二人。そんな二人を見たかごめはぼそっとつぶやいた。
「菖蒲ちゃんはいいわね・・・。強くて・・・」
「違うよ。弱いんだよ」
かごめが言っていることが聞こえたのか、珊瑚もつぶやいた。かごめは何故?という顔をして珊瑚を見る。
「強い人間なんていないんだよ。人間は一人では生きられない。そうだろ?」
「うん・・・・」
「だから菖蒲もたくさんの人たちに励まされ、励ましあった。きっと菖蒲も鋼牙に対してすごく悩んだんだと思う。だけどきっと支えてくれる人がいたから、ああやってあきらめることがない。あたしだってかごめちゃんがいなかったらいつまでもへたりこんでいたかも」
珊瑚はかごめに微笑みなげた。かごめはぽかーんと言う顔をしていたが、はっとしてきびすを返した。
「そ、そんな。あたし何にもしてないよ。どちらかって言うとあたしのほうが珊瑚ちゃんにいろいろしてもらったりして・・・」
もごもご言うかごめを見てくすっと笑う珊瑚。珊瑚はかごめに向き直り、
「お互い様だね」
そう言い、歩いていった。かごめは立ちすくしている。
(「・・・・強い人間なんていない・・・・。そうだよね。珊瑚ちゃんだけじゃない。あたしはたくさんの人に励まされた・・・。これは自分の力じゃない・・・」)
「かごめー」
突然呼ばれ、はっとするかごめ。昇降口には犬夜叉たちがかごめを見ている。
「あーひっどーい。おいていくなんてー」
「バーカ。お前がぼーっとしていたからだよ」

~一人じゃない・・・・。みんながいる・・・・。
          だから  自信を持って・・・。前を見て、進もう・・・~

                <続>

。 作者からのコメント
あぁ~なんか毎度ながら文章が変・・・・。
変ーーー!!
なんかごちゃごちゃしてしまって突っ込みたくなる方も多いかと・・・
あぁ!突っ込まないでください!どうか!(←アホか
しかも桔梗先生の性格おかしいし・・・奈落先生も・・・。
あ、あと犬夜叉も・・・はぁ・・・・駄目だね~私って(笑
こんなのでよければコメントくださるとうれしいです

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